薬九層倍
薬九層倍という言葉がTVコマーシャルで流れています。江戸時代にはと、断りはありますが、私にとって少々気になる言葉です。当時は同類の言葉として、魚三層倍、呉服五層倍、花八層倍、百姓百層倍、坊主丸儲け、按摩掴み取りというように江戸庶民の囃子詞と洒落のように思えます。
他の仕事のことはわかりませんが、薬の場合は当薬局が開局した明治30年の記録からすればうなずける面もあります。薬局と言っても当時は小売業で、仕入れは奥羽線もなく関山街道を超え仙台から鉄道で東京に行き仕入れていたようです。例えば薬草など仕入れ単位は小売単位の十数ともなれば、小売価格の九倍でも残った在庫を考えれば安いのではないかとも考えられます。
さすが現在では考えられないことです。ただし、薬の製造現場では原料費だけを考えればもっと儲かっているのかもしれませんが、そこまでの開発に係る年月や、包装機材、配送費、管理費そして人件費を考えると、よくもこんな安い価格で販売できると感心する場面の方が多くあります。コマーシャルを見るに付け、昔々が羨ましく思えるこの頃です。