漢方薬の今
現在漢方薬は、日本の医療の歴史の中で、最も使われているのではないかと思われます。この様に使われることになったのは、保険医療に採用されてからです。私が漢方を勉強し始めたのが1965年頃で、その時点で消えかかっていた漢方薬の歴史を繋いでいたのは、東洋医学分野の鍼灸師や生薬に詳しい薬剤師の多くの方々、医師では数人の方たちでした。その当時は「漢方は長く飲まないと効かない」はまだ良い方で、「効くはずがない」とまでいわれていました。そういう状況でも各地の漢方研究会では、教科書に漢文で書かれた傷寒論などを読み解き、各人が実際漢方薬を使った経験を持ち合い研究していました。明治に西洋医学一辺倒になってから保険採用になるまでの100年もの間、そのようにして繋がれていたのです。現代医学の中に、突然保険で使える様になって漢方薬の認知度が上がったのは良いのですが、漢方は症状の分析で処方を選ぶのに対し、現代医学では検査結果で治療法を選びますので病気の捉え方の違いがあり、漢方薬本来の効果がある使い方になるのはまだまだ時間がかかりそうです。